日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-133
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一般演題 ポスター
亜鉛錯体を用いた内皮細胞シンデカン-4の新規発現調節機構の解析
*原 崇人中村 武浩松崎 紘佳吉田 映子山本 千夏鍜冶 利幸
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抄録
【目的】血管の内腔を覆う内皮細胞の傷害は,心血管疾患の誘発因子となるため,傷害を受けた内皮細胞は速やかに修復されることが望ましい。プロテオグリカンは,コアタンパク質に高度に硫酸化された糖鎖が結合した構造をもち,中でも細胞膜貫通型のシンデカン-4(SDC4)は,内皮細胞の防御応答に寄与する。亜鉛は傷害内皮細胞層の修復を促す金属元素であるが,近年,有機金属化合物がその多様な反応性より新たな生体機能解析ツールとして利用される機運が高まっている。そこで本研究では,内皮細胞のSDC4を発現調節する亜鉛錯体の探索し,その調節機構の解明を試みた。【方法】ウシ大動脈内皮細胞を用い,mRNA発現は定量的RT-PCR,タンパク質発現はwestern blot法により検討した。遺伝子導入はリポフェクション法で行い,蛍光基質発現法にて酵素活性を測定した。【結果・考察】1,10-phenanthroline(o-Phen)骨格をもつ亜鉛錯体(Zn-Phen)がSDC4の発現を強く誘導した。無機亜鉛による発現誘導は認められなかったが,o-Phenは濃度・時間依存的にSDC4の発現を誘導し,その強さはo-Phen>Zn-Phenであった。また,o-PhenとZn-Phenは低酸素誘導因子-1α(HIF-1α)の発現を増強させた。HIF-1αまたは,その補因子HIF-1βの発現抑制下では,o-PhenとZn-PhenによるSDC4の発現誘導が抑制されたが,HIF-1αのアイソフォームであるHIF-2αの発現抑制下では同様の傾向は認められなかった。加えて,o-PhenおよびZn-Phenの処理下ではHIF-αの分解に寄与するPHD2活性の減弱が認められ,本機構を介したHIF-1α/β経路特異的なSDC4の発現誘導が明らかとなった。本研究は,有機金属化合物を用いて内皮細胞SDC4の新しい発現調節機構を見出すと同時に,配位子への金属の導入により生物活性を調節できることを示した例である。
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© 2017 日本毒性学会
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