日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-180
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一般演題 ポスター
ヒトおよびラット由来細胞を用いたマンノース共役クロリン及びレザフィリンによる光線力学療法の効果比較
*篠田 陽高橋 勉秋元 治朗市川 恵山崎 宏美鳴海 敦矢野 重信藤原 泰之
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抄録
【目的】光線力学療法 (Photodynamic therapy : PDT) は,光により励起された光感受性物質から産生される活性酸素種によって抗腫瘍効果を得る手法として知られている。これまで多くの光感受性物質が合成されその効果が検証されているが,その報告の多くは少数の腫瘍細胞を用いて既存の光感受性物質と比較する方法を採用しており,光感受性物質の細胞特異性を十分に検討されているとは言い難い。本研究では,9種類のヒト及びラット由来細胞を用い,新規光感受性物質マンノース共役クロリン (β-m-chlorin) 及び既に臨床で用いられているレザフィリン (NPe6) についてその抗腫瘍効果を比較した。
【方法】ヒト由来細胞腫 (グリオーマ: U251, A171, T98G; 髄膜腫: HKBMM),ラット由来細胞腫 (グリオーマ: C6; 髄膜腫: KMY-J; 副腎髄質褐色腫: PC12)およびラット大脳皮質神経細胞,アストログリア細胞を用い,β-m-chlorin及びNPe6のPDTによる殺細胞効果評価を行った。
【結果・考察】すべてのヒト由来細胞腫において,NPe6がβ-m-chlorinよりも高い抗腫瘍効果を示した。これに対しラット由来のC6及びKMY-Jでは,β-m-chlorinの方が著しく高い抗腫瘍効果を示した。正常細胞であるラット大脳皮質神経細胞及びアストログリア細胞でも同様にβ-m-chlorinが高い殺細胞効果を示した。しかしながらラット由来細胞腫であるPC12では,β-m-chlorinは殆ど抗腫瘍効果を示さなかった。またこれらの違いの一部は光感受性物質の細胞内取り込み速度の違いによる可能性が示唆された。以上のことから新規光感受性物質の効果検討においては複数の細胞種での検討や,細胞特異性の偏りが存在する可能性を考慮することが重要である事が明らかとなった。
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© 2017 日本毒性学会
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