抄録
化合物によるサル骨髄毒性をin vitroで評価するため、サル骨髄単核細胞を用いて、colony-forming unit-granulocyte, macrophage(CFU-GM)及びburst-forming unit-erythroid(BFU-E)コロニーアッセイ法を検討した。さらに、ヒト臨床で骨髄抑制が問題となっているドキソルビシン、クロラムフェニコール、及びリネゾリドのサル骨髄単核細胞におけるCFU-GM及びBFU-Eコロニー形成への影響を調べるとともに、ヒト臍帯血細胞におけるCFU-GM及びBFU-Eコロニー形成への影響と比較した。雄性カニクイザル(5~6歳齢)の坐骨あるいは腸骨より採取した骨髄単核細胞を、CFU-GMコロニーアッセイ用に比重1.067、1.070、及び1.077 g/mLで、BFU-Eコロニーアッセイ用に比重1.077 g/mLで比重遠心処理し、CFU-GMコロニーアッセイでは9日間、BFU-Eコロニーアッセイでは13日間メチルセルロース培地に種々サイトカインを添加して培養した。その結果、CFU-GMコロニーは比重1.070 g/mLで、BFU-Eコロニーは比重1.077 g/mLで処理することにより評価に十分な数のコロニーが形成された。各化合物を用いたCFU-GM及びBFU-Eコロニーアッセイの結果、いずれの化合物でも濃度依存的にサル及びヒトCFU-GM及びBFU-Eコロニー形成を阻害した。ヒトCFU-GMと比較してサルCFU-GMはクロラムフェニコールに高感受性、ドキソルビシンには低感受性を示した。一方、ヒトBFU-Eと比較してサルBFU-Eは、全ての化合物で高感受性を示した。
以上、サル骨髄単核細胞を用いるCFU-GMコロニーアッセイでは比重1.070 g/mL、BFU-Eコロニーアッセイでは比重1.077 g/mLが細胞分離で適していると判断した。さらに、サルCFU-GM及びBFU-Eコロニーアッセイは、化合物による骨髄毒性の感受性種差をin vitroで評価するのに有用なツールと考えられた。