日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-4
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優秀研究発表 ポスター
血中microRNA-802 の肝障害バイオマーカーとしての有用性評価
*黒岡 貴生小野里 知哉小川 峻志草深 穂高林 守道武藤 信一田村 啓
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抄録
【背景・目的】薬物性肝障害は医薬品の開発中止又は市場撤退の主要因となっており,非臨床安全性試験における精度が高い肝障害の予測が求められている。非臨床安全性試験における肝障害バイオマーカー(BM)として,AST, ALT, T-BILが広く用いられているが,特異度・感度の面で課題が存在する。高い肝臓特異性と感度を有するBMとしてmicro RNA(以下miR)-122が見出されているが,血中からの消失が早い点が課題として挙げられる。近年,肝臓特異性が高く,ANIT誘発肝障害モデルにおいてmiR-122に比し長時間血中で高値を示すmiR-802の報告がある。しかし,他の肝障害モデルを用いてmiR-802の肝障害検出力を評価した報告はない。本検討では,複数の薬物誘発肝障害モデルラットを作成し,病理所見に対するmiR-802の検出力を他BMと比較することで,肝障害BMとしてのmiR-802の有用性を評価した。
【方法】7週齢の雄性Wisterラットを用いて,既知の肝,腎又は心障害薬物の4日間反復投与試験を行った。最終投与24時間後に非絶食下で剖検を行い,血中の各種BMの測定及び肝臓の病理組織学的検索を行った。AST, ALT, GLDH活性並びにTBA及びT-BIL量は自動分析装置を用いて測定し,miR-122及びmiR-802量はリアルタイムPCR法により測定した。各BMの肝障害の検出力及びカットオフ値算出にはROC曲線を用いた解析を行い,最適なBMの組み合わせの選択にはロジスティック回帰分析法を用いた。
【結果・考察】総評価数120例のうち,34例で肝臓に病理所見が認められた。ROC曲線を用いた解析から,各BMのカットオフ値とAUCを算出した。miR-802はALT又はmiR-122と同等以上の検出力を有することが示唆された。ロジスティック回帰分析では,既存BMとmiR-802の組み合わせにより病理所見との一致率が向上した。以上,血中miR-802は肝障害BMとしての有用性が高く,既存の肝障害BMに加えることで薬物性肝障害の検出力向上に繋がることが期待される。
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© 2017 日本毒性学会
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