日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-61
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優秀研究発表 ポスター
SDT fattyラットにおける12週間の0.3%食塩負荷が2型糖尿病様病態進展に及ぼす影響
*張 舜恵美谷島 克宏太田 毅篠原 雅巳新里 珠美宇野 絹子煙山 紀子中江 大
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抄録
【背景】近年、2型糖尿病をはじめ、肥満や高血圧を伴うメタボリックシンドロームの患者数の増加が世界規模で問題になっている。同様に、食塩の過剰摂取も問題視されており、高血圧やそれに伴う腎臓病、肝硬変など様々な疾患の発症に関わるとの報告もある。本研究では、肥満を伴う自然発症2型糖尿病モデルであるSDT fattyラットを用いて、食塩負荷がその病態に及ぼす影響を検索した。
【材料及び方法】本実験は、7週齢の雌性SDT fattyラットまたは対象のSDラットに、0.3% NaCl水を10週間飲水させ、体重、血糖値、血圧及び病理組織学的検査を実施した。
【結果】体重及び血糖値は飼育期間を通し高値を示したが、血圧はそれら両者間に明らかな差がなく、食塩負荷はそれらの指標に明らかな影響を与えなかった。腎臓では、SDT fattyラットの尿細管に軽度のArmanni Ebstein病変が、糸球体に軽度の癒着がそれぞれ観察され、食塩負荷により、軽度の尿円柱が出現し、前述の腎組織変化が増強された。心臓では、食塩負荷を施した動物で、軽度の炎症性細胞浸潤及び線維化が認められた。肝臓では、食塩を負荷したSDT fattyラットにおいて、非負荷群と比べ、炎症性細胞浸潤及び活性化伊東細胞が顕著に観察され、肝線維化の進行も認められた。膵臓では、SDT fattyラットに膵島の大型化や線維化などの病変が認められたが、食塩負荷の影響はみられなかった。
【考察】以上の結果より、食塩を負荷したSDT fattyラットでは、非負荷群と比較し、腎臓、心臓及び肝臓において病変が増強し、2型糖尿病様病態において食塩の過剰摂取が悪影響をもたらす可能性が示された。また、SDT fattyラット及びSDラットの双方の心臓において食塩負荷の影響が認められたことから、食塩の過剰摂取は、2型糖尿病様病態の有無にかかわらず、心臓に影響をもたらすことが示唆された。
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© 2017 日本毒性学会
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