日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-84
会議情報

一般演題 ポスター
ラットにおける環境エンリッチメント及び床敷飼育の影響の検討
山田 郁*梶田 晋平王 蒙東川口 高正並木 健吾藤ヶ谷 浩文栗林 正伯柳 浩由紀
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【背景及び目的】近年動物福祉向上の観点から,毒性試験においてもラットの飼育ケージへの環境エンリッチメント(EE)の設置や金網床ケージによる飼育(金網飼育)から平床ケージを用いた床敷きでの飼育(床敷飼育)への変更が求められている.本試験では飼育ケージへのEE設置や床敷飼育の各種毒性評価パラメータへの影響を検討した.
【方法】6週齢のCrl:CD(SD)ラット(雌雄各群10例)に4週間0.5 w/v%メチルセルロース液を投与し,各種飼育条件で試験を実施した場合の一般状態,体重,摂餌量,血液学的検査,血液凝固系検査,血液生化学的検査,剖検及び器官重量への影響を検討した.飼育条件の比較は,金網飼育と金網飼育下でEE(休息板のみ,休息板及びダイヤモンドツイスト又は休息板及びアルミナボール)を設置した場合,金網飼育と床敷飼育又は床敷飼育下でEEを設置した場合,床敷飼育と床敷飼育下でEE(ダイヤモンドツイスト及び積木)を設置した場合について実施した.
【結果】金網飼育下でEEを設置した場合,金網飼育と比較していずれのEEを設置した場合も毒性評価パラメータへの影響は認められなかった.床敷飼育及び床敷飼育下でEEを設置した場合,金網飼育と比較して雄で投与初期に摂餌量の低値,雌で投与期間を通じて摂餌量及び体重の低値が認められた.また,体重及び摂餌量の低値に伴うと考えられる血液生化学検査値及び器官重量の変動が認められた.
【結論】床敷飼育とした場合,金網飼育と比較して体重及び摂餌量の低値に伴うと考えられる検査値の変動が認められた.従って,飼育条件の変更の際には適切に背景データを取得しておく必要があると考えられた.ただし,変動の幅としては,これまでに当施設にて金網飼育下で実施した試験の対照群においても認められた範囲内の値であったことから,これらの検査値の変動が毒性評価に影響するものではないと考えている.

著者関連情報
© 2017 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top