日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: S17-3
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シンポジウム17 食品汚染と毒性影響:恒常性機能の撹乱による毒性発現メカニズム
飲料水中に存在する核内受容体作動性ハザードとその健康リスク
*中西 剛
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抄録
 中国内陸部の大都市のような場所では、水循環が乏しいことから、水環境の保全性と上水の安全性の確保が問題となっている。例えば、昨今、ホルモン様の作用など様々な生理活性をもつ医薬品や化粧品等のパーソナルケア製品を起源とする化学物質(PPCPs)が、水環境中からも検出されていることが社会問題となっている。水循環が乏しい地域において、これらが下水もしくは上水工程で取り除かれなければ、水環境中に蓄積することになり、上水のリスク因子となる可能性がある。このような背景のもと今回我々は、特に高脂質血症の治療薬で核内受容体であるperoxisome proliferator-activated receptor (PPAR)αに作用するフィブラート系薬物に注目し、上水中のハザードとしてのフィブラート系薬物について調査研究を行った。
 その一方でこのような地域においては、上水を飲料用とせずに、習慣的にペットボトルの水を飲用する傾向にある。かつての飲料水用のボトルには、estrogen receptor(ER)を撹乱することで悪影響を及ぼす可能性が懸念されていたビスフェノールA(BPA)を含んだプラスチック素材が用いられていたが、現在、市販の飲料水用のボトルには、BPAに代わるプラスチック素材のフルオレン-9-ビスフェノール(BHPF)が用いられている。最近我々は、このような市販のボトルからBHPFが飲料水中に溶出していることを明らかにするとともに、このBHPFがERに対して強いアンタゴニスト活性を有することを見いだした。また我々の検討結果から、BHPFは生殖毒性を有する可能性も示唆されている。本講演では、水循環の乏しい大都市で飲用されている飲料水中に存在するこれら核内受容体作動性ハザードの健康リスクについて議論したい。
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© 2017 日本毒性学会
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