日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: S23-3
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シンポジウム23 毒作用発現におけるエピジェネティック毒性とその臨床展開
PCBとヒト精子におけるエピジェネティクス
*有馬 隆博
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抄録

近年我が国の晩婚化、少子化の社会情勢と、医療技術の進歩により、既婚者の15−20%が不妊治療を受けている。また、そのおよそ40%は、男性不妊(精子異常)で、過去10年間で患者数は約25倍に増加していることが報告されている。一方、以前よりエストロゲン様作用を有する環境由来化学物質が、ヒトの性腺(生殖細胞)に影響を及ぼし、オスのメス化、精子数減少などに影響を与え、種の存続に関わる事が社会的話題となったが、その関連性については、十分な科学的根拠がないため、未だ明らかにされていない。
環境由来化学物質は、エピジェネティックな修飾により、遺伝子発現に影響を及ぼすことが知られている。エピジェネティクスとは、DNAの塩基配列の変化を伴わない、遺伝子発現制御に関わる後付けの修飾である。主たる修飾として、DNAのメチル化、ヒストンのアセチル化やメチル化が知られている。このエピジェネティックな修飾は、生殖細胞形成過程では、『細胞の記憶』として遺伝子刷り込み機構(ゲノムインプリンティング)として知られている。インプリンティングとは、特定の親由来の遺伝子が選択的に発現する現象で、哺乳類の正常な発生、分化に必須な現象である。また、この機構の破綻は、先天性疾患に限らず、乳幼児の行動、性格異常、成人疾患にも影響を与える。本学会では、男性不妊症患者を対象に化学物質としてPCBに注目し、ヒト精子へどのような影響を与えているのか、精子の形態と機能の両面から解析を行い、その関連性について発表したい。

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