日本毒性学会学術年会
第44回日本毒性学会学術年会
セッションID: S27-4
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シンポジウム27 日本毒性病理学会合同シンポジウム:環境中の微量元素の毒性学
鉛:健康影響に関する疫学知見と曝露
*吉永 淳
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抄録
職業曝露等高レベルの鉛曝露による健康影響は、教科書にも詳細に記述されている。各種規制のおかげで、現在世界中のほとんどの地域・国で環境中の鉛レベルが十分低下し、環境曝露によって教科書的な鉛中毒が起こる懸念はほぼないと言ってよい。しかしながら環境レベルが下がるとともに、これまで顕在化していなかった健康影響があることが気づかれるようになった。それは小児の認知発達の障害である。世界各地で行われた環境鉛曝露レベルと小児の知能指数等の発達指標との関連に関する疫学調査結果から、その量-影響関係が徐々に明らかになってきており、以前では想定もされなかった低レベルの曝露でも影響がありうることが示唆されている。
こうした知見に基づき、今後わが国でも小児の鉛曝露レベルを低減化することが求められることになると推察されるが、ガソリンや水道管など、かつて知られていたような明白な鉛曝露源がなくなった現在、どうしたら鉛の曝露を減らし、健康リスクを減ずることができるか、リスク管理において新しい情報が必要になっている。
本口演では、最近の疫学調査結果をレビューして量-影響関係の一端を紹介するとともに、わが国の一般環境における鉛曝露源に関する知見を紹介する。
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© 2017 日本毒性学会
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