抄録
肝臓や脳には莫大な量のCOを生成する活性があり、それぞれ微小血管の拡張および収縮の制御に関係している。肝臓では肝細胞からのCOで伊東細胞のグアニル酸シクラーゼが活性化し類洞血管が拡張、脳のNeurovascular unitでは神経細胞からCOが生成され、astrocyteに発現するH2S生成酵素Cystathionine beta-synthase (CBS)が受容体となり、低酸素でCOが低下するとCBSの阻害が解除されることによりH2Sを介した血管拡張が作動する(文献1)。近年我々はこれら以外のCOの受容体を探索するべくアフィニティナノビーズを用いたCO感受性たんぱく質を探索し、Progesterone receptor membrane component type-1 (PGRMC1)を同定した。このたんぱく質は機能未知であったが、固形腫瘍に豊富に発現しており、EGF受容体やCytochrome P450との相互作用が知られているがその構造機能相関は未知であった。PGRMC1は1分子あたり1つのヘムが配位し、2分子が5配位のヘム同士のスタッキングで2量体を形成し、EGF受容体やcytochrome P450と相互作用し、それらの標的分子の機能を活性化することが明らかになった。その病態生理学的意義と薬物による機能制御の可能性について講演で触れたい。