日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-11
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一般演題 口演
低酸素下におけるNrf2及びその制御因子の発現解析
*中村 美里大黒 亜美今岡 進
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抄録

NF-E2 related factor 2 (Nrf2)は、抗酸化因子や第I-III相薬物代謝酵素を誘導することで酸化ストレスの抑制やデトックス作用を示す転写因子である。Nrf2の増加は虚血・再灌流やアセトアミノフェンのような薬物により誘導される酸化ストレスや細胞障害を抑制することが明らかにされている。一方で、Nrf2はがんの悪性化に関わることも報告されている。Nrf2は主にKeap1を介したプロテアソーム分解によりその発現が制御されているが、近年ではオートファジー関連因子p62による制御が報告され、また我々はE3ユビキチンリガーゼSiah2によるNrf2分解を見出している。本研究ではこれらの因子によるNrf2発現制御の検討を行った。HEK293T細胞においてp62過剰発現は、Nrf2発現量及びHO-1,NQO1 mRNA量を増加させたが、Keap1発現量に影響を与えなかった。さらに、p62過剰発現により内在性Keap1とNrf2の相互作用が減少したことから、Keap1との結合においてp62とNrf2が競合すると考えられる。また生理的条件下でのNrf2及びその制御因子の発現を検討した。低酸素下においてNrf2発現は顕著に減少しており、この減少には低酸素で誘導されるSiah2の関与が示された。一方でp62発現量は低酸素により減少することが示された。p62はNrf2の下流因子であると報告されていることから、Keap1阻害剤tBHQの添加によりNrf2発現量を増加させたところ、p62発現量に変化は見られなかった。また低酸素によるp62の減少はリソソーム分解を阻害する塩化アンモニウムでは抑制されず、プロテアソーム分解阻害剤MG132により抑制された。これらの結果より、低酸素によるp62の減少はNrf2減少に伴う変化ではなく、プロテアソームによる分解を介していることが示唆された。

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