日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-113
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一般演題 ポスター
生活関連化学物質のヒト健康および環境影響に関するリスクアセスメント-モノアルキル4級アンモニウム塩の暴露評価と影響解析-
*西岡 亨藤田 侑里香山根 雅之池田 直弘本多 泰揮森田 修
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抄録

 国際的な化学物質管理に関する戦略的アプローチ(SAICM)に沿った化学物質の適切な管理には、化学物質の有害性と暴露を定量的に評価し、ヒト健康と環境影響のリスクを科学的に解析することが重要である。今回、陽イオン性界面活性剤であるモノアルキル4級アンモニウム塩(QAC)について、香粧品や衣料用洗剤などの消費者用製品に広く使用されるアルキル鎖長C12~18のQACを対象とし、香粧品原料としての安全性評価に化学品規制の視点を加えた包括的なリスク評価を行った。

 シャンプー使用による経皮暴露にポンプスプレー製品使用による吸入暴露を加えた香粧品用途でのヒト暴露量は0.0023 mg/kg/dayとなり、衣料用洗剤使用時の経皮暴露に環境経由の暴露を加えた家庭品用途でのヒト暴露量0.0035 mg/kg/dayとほぼ同等と推定された。毒性の質や強度にアルキル鎖長の影響は認められず、使用期間を考慮した導出無毒性量(DNEL;香粧品:0.05 mg/kg/day、家庭品:0.025 mg/kg/day)以下の暴露と推定された。

 一方、水生生物に対する毒性は、藻類が甲殻類等に比べて強く、またアルキル鎖長が中程度のC14,16で強くなる特徴が観察された。河川水中での半減期は約22時間と推定され、アルキル鎖長の増加に伴い消失速度が遅くなる傾向が認められた。産総研-水系暴露解析モデル(AIST-SHANEL)および平衡分配法を用いて予測した全国河川中の環境濃度は、河川水で0.034 µg/L、河川底質で0.39 mg/kg-dryとなり、水生生物および底生生物に対する予測無影響濃度(PNEC;河川水:0.11 µg/L、河川底質:5.0 mg/kg-dry)以下であった。

 以上より、アルキル鎖長C12~18のQACは現在の使用状況において、ヒト健康と環境に対して有害影響を及ぼす懸念は低いことが示唆された。

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