日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-156
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一般演題 ポスター
ヒト及び実験動物における生後の発達比較
*井上 裕基兒玉 利尚梶田 晋平山本 雅克児玉 晃孝桝田 くみこ上田 誠野儀 裕之本山 径子峯島 浩松本 清鈴木 睦渡部 一人
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抄録

 小児医薬品開発は、欧米で法規制による義務化及びICH国際標準化の整備や特許期間延長等のインセンティブが後押しすることで漸増しており、それに伴い適正かつ効率的な非臨床安全性評価が重要になっている。幼若動物を用いた安全性試験をデザインする際には、適応小児の年齢等の情報とヒト及び動物の標的組織・器官の発達段階を考慮し、適切な投与開始時期(日齢/週齢/年齢)と投与期間を設定する必要があるが、各組織・器官の発達段階を種間で比較する研究・文献は少ない。そこで、製薬協 基礎研究部会 小児用医薬品 非臨床安全性評価タスクフォースでは、2017年までの公表論文及び書籍を用いてマウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル、ミニブタ及びヒトの免疫系、骨格系、生殖器系、神経系、消化器系、心臓、腎臓及び肺における発達指標について調査研究を実施した。

 ラットでは神経系等、多くの組織・器官系についてヒトとの比較が可能であった。一方、ミニブタについては各組織・器官で公表情報が非常に少なく、その他の動物種では組織・器官によって、情報に過不足がありヒトとの比較が困難であった。代謝については、酵素活性・量あるいはmRNA量とエンドポイントが一定していない上、動物種により代謝に寄与する分子種が異なることで体系的な比較が困難であった。なお、ヒトで出生後に成熟するが、実験動物では胎児期に成熟する器官・組織は今回の調査では認められず、ヒトの生後発育に対する影響を評価する上で、幼若動物試験の重要性が改めて認識された。

 以上、幼若毒性試験での投与開始齢や投与期間を決定するための情報を網羅的に調査したことにより、適切な幼若動物毒性試験の実施が可能となった半面、不十分な情報を補足するための基礎研究の必要性が明らかとなった。今後もこのような調査を継続し、より情報を精緻化することで適切な幼若動物試験を実施し、より安全な小児医薬品開発に貢献してゆく予定である。

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