日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-173
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一般演題 ポスター
核内受容体FXR、LXRによる細胞分化制御と癌化について
*藤野 智史加藤 玲別府 匡貴村上 聡早川 磨紀男
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抄録

【目的】我々は、胆汁酸をリガンドとする核内受容体 farnesoid x receptor (FXR) が腎癌細胞の細胞増殖を促進する一方で正常腎細胞株の増殖には影響を及ぼさないことを報告している(JTS, 2017)。またFXRは、分化を制御する転写因子 hepatocyte nuclear factor-4 alpha の発現を促進することを見出している(JB, 2012)。今回、FXR、および脂質代謝などでFXRと共役する liver x receptor (LXR) について、正常腎細胞と腎癌細胞における未分化マーカーOct3/4の発現に及ぼす影響を比較検討し、両核内受容体による細胞分化・増殖の制御と癌化との関連について検討した。

【方法・結果】正常腎細胞株HK-2と腎癌細胞株ACHNにおいてFXRを活性化させたところ、いずれにおいてもOct3/4レベルは変動しなかった。一方、LXRのアゴニストGW3965でLXRを活性化したHK-2細胞ではOct3/4レベルが顕著に低下したのに対し、ACHN細胞ではLXRを活性化してもOct3/4レベルは変動しなかった。LXRアゴニストのOct3/4レベル変動作用を裏付ける目的でHK-2、ACHN細胞をLXR逆作動薬SR9243で処理したところ、予想に反してHK-2細胞のOct3/4はLXR逆作動薬によって増大せず、むしろ若干の低下がみられた。また、ACHN細胞のOct3/4はLXR逆作動薬によって顕著に減少した。

【考察】FXRは正常腎細胞、腎癌細胞共に細胞分化には影響せず、腎癌細胞の増殖のみ促進すると考えられる。LXRは腎細胞の分化を制御すると考えられるが、そのメカニズムは癌化しているか否かで異なり、詳細についてはLXR alphaとLXR betaについて個々に検討する必要があると考えられる。

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© 2018 日本毒性学会
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