【目的】本研究は、インスリン抵抗性肥満病態のモデル動物であるZucker fatty(ZF)ラットと、その対照動物であるZucker lean(ZL)ラットにおいて、ウェスタンダイエット(WD)の投与がそれらの肝に及ぼす影響について、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)との類似性の観点から検討した。
【材料及び方法】実験は、各群5匹の7週齢雄性ZFおよびZLラットに、高ショ糖・高脂肪・高コレステロールであるWD(ショ糖25.0%、脂肪15.2%、コレステロール2 %;日本クレア(株))または普通食(SD)(CRF-1, オリエンタル酵母(株))を18週間自由摂取させた後、肝と血漿を採取して、血漿生化学的および病理組織学的検査を実施した。
【結果】一般状態や体重推移においては、両系統間、また両食餌群間に明らかな差がなかった。WDは、両系統のラットにおいて血漿ALT・AST活性を上昇させ、肝に脂肪化・ED1陽性炎症細胞浸潤・線維化などNASH様病態と4HNE生成として検出される酸化ストレスを誘発した。これらの内、肝の病理組織学的変化はZFラットでZLラットより高度であったが、その他には明らかな系統差がなかった。また、血漿総コレステロール量は、ZFラットでのみ、WDにより増加した。
【結論】以上より、WDは、肥満型のZFラットのみならず、非肥満型のZLラットにも、NASH様病態を誘導し、その作用がZFラットで高度であることが判明した。したがって、インスリン抵抗性と肥満は定説通り生活習慣病であるNASHの発生に一定の役割を果たすが必ずしも必要条件でないことが示唆され、肥満の介在しない機序で発生するNASH発生について解析する必要性が示された。