抄録
6歳,避妊雌の柴犬が,右耳における痒み動作を主訴に当院を受診した。他院では外耳炎と診断され,加療されていたとのことであった。耳道内視鏡を用いた観察では,鼓膜に損傷は認められなかった。耳道内視鏡下で鼓膜穿刺を実施し,鼓室胞を洗浄したところ,洗浄液中に細菌が認められたことから,本症を中耳炎と診断した。細菌培養同定および感受性検査の結果に基づき,抗生物質を選択して投与したところ,治療開始より2ヵ月後には症状は改善した。2ヵ月後の耳道内視鏡検査では外耳道に炎症はほとんどみられず,また鼓室胞の洗浄液から細菌は検出されなかった。以上の経過より,本症例では耳道内視鏡下での鼓膜穿刺および洗浄が,中耳炎の診断に有用であったと考えられた。