日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-242
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一般演題 ポスター
LC/MS/MS法を用いたイヌおよびサルの血清中胆汁酸に対する摂餌の影響評価
*野中 聖子Lina LUO
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抄録

種々のメタボローム解析により,胆汁酸は肝障害および肝疾患のバイオマーカーとなる可能性が示唆されている。これらの解析では,主に健康な個体と肝疾患を有する個体の生体試料(血清または尿)の比較により,バイオマーカーとなりうるパラメータが特定されている。これらの多くの試験では,健康な個体と比較して肝疾患を有する個体で種々の胆汁酸が上昇することが報告されている。このことから,コール酸,グリココール酸およびタウロコール酸など種々の胆汁酸は,非臨床および臨床試験における薬物性肝障害(DILI)の有用なバイオマーカーとなる可能性が期待されている。一方,摂食により胆汁酸放出が刺激されることから,疾患または薬剤による血清中胆汁酸への影響と区別する必要がある。そこで,本研究ではビーグル犬およびカニクイザルを用いて血清中胆汁酸プロファイルに対する摂餌の影響(経時変化・摂餌量)について評価した。

試験動物から摂餌前および摂餌後に採血し,9種の血清中胆汁酸(コール酸,ケノデオキシコール酸,デオキシコール酸ならびにこれらのタウリンまたはグリシンの抱合体)の経時的変化(イヌ:0.5, 1, 2, 4, 6, 24時間,サル:0.5, 1.5, 4時間)について,バリデートされたLC/MS/MS法を用いて測定した。イヌでは,摂餌後に最も上昇したのはタウリン抱合体で,総胆汁酸の上昇のタイミングと相関していた。これは,タウリン抱合体がイヌで最も多い胆汁酸の構成成分であることに起因すると考えられた。サルでは,摂餌前においてはデオキシコール酸が血清中総胆汁酸の58%を占めるが,摂餌後にはタウリン抱合体およびグリシン抱合体が上昇したことにより,血清中胆汁酸の構成割合が顕著に変動した。

以上の知見が,薬剤開発などにおいて摂食後の血清中胆汁酸をバイオマーカーとして評価する場合の背景値として役立つことが期待される。

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