【目的】腎障害の診断のために様々な尿中バイオマーカー(BM)が測定されているが、マウスに関する報告は少ない。本研究では、B6C3F1/Crlマウスの尿中BM(kidney injury molecule1[KIM-1]、albumin、osteopontin、neutrophil gelatinase-associated lipocalin[NGAL]及びclusterin)の背景値を収集するとともにシスプラチン(CDDP)腎障害時のBMの変動を調べた。
【方法】無処置の8又は10週齢のB6C3F1/Crlマウス雌雄各20例を用いて尿中BMをMILLIPLEX® MAP Mouse Kidney Injury Magnetic Bead Panelとレビス®尿中アルブミン-マウスで測定した。次に、8週齢の雄マウス(5例/群)にCDDPの10又は20 mg/kgを単回皮下投与(Day 1)後、Day 3~4に24時間尿を採取して尿中BMを測定するとともに、Day 4に血漿中腎パラメーター(尿素窒素[UN]及びクレアチニン[CRE])及び腎の病理組織学的検査を実施した。
【結果・結論】マウスでは、KIM-1、albumin及びNGALは全例で測定可能であり、週齢差はみられなかった。Albuminは雌が雄の約2倍の高値を示し性差がみられた。Osteopontin及びclusterinは18/80例が定量下限未満であり、糞の混入によって低値を示した。CDDPの10及び20 mg/kgでそれぞれ軽微及び軽度な近位尿細管の単細胞壊死が惹起された。軽微な腎障害例において尿中albuminの増加傾向、軽度な腎障害例ではKIM-1、albumin及びNGALの有意な増加がみられた。CDDPの20 mg/kgでは血漿中UN及びCREの有意な増加もみられたが、マウスにおいても尿中BMがより感度に優れることが示唆された。