日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-45
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優秀研究発表 ポスター
ヒトiPS細胞由来神経ネットワークの興奮性・抑制性ニューロンの割合に応じた自発活動特性および薬剤応答
*横井 れみ松田 直毅小田原 あおい鈴木 郁郎
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抄録

 我々は神経ネットワークの機能を評価できる平面微小電極アレイ(MEA)を用いた細胞外記録法にて、中枢神経系の主な毒性現象である痙攣発火を指標とした評価系の構築を行ってきた。痙攣誘発は興奮性入力と抑制性入力のバランスが重要であるが、痙攣誘発評価に最適なヒトiPS細胞由来ニューロンにおける興奮性ニューロンと抑制性ニューロンの割合はわかっていない。そこで本研究では、ヒトiPS細胞から分化させた大脳皮質ニューロンの興奮性ニューロンと抑制性ニューロンの混合比を10:0、7:3、5:5、3:7、0:10(条件A,B,C,D,E)とした神経ネットワークをMEA上に構築し、自発活動特性および既知の痙攣誘発剤に対する応答を調べた。自発活動において、混合比の違いにより、同期バースト発火の形状(長さ、大小の混合比)が異なっていた。条件Aでは、長さが短く、スパイク数の多い同期バースト発火を示し、条件Eでは長さが長い同期バースト発火が検出された。また、GABAニューロンの割合が上昇するにつれて、総発火数に対して同期バースト発火が占める割合が高くなった。なお、条件Eにおいても同期バースト発火が検出されたことから、興奮性のニューロンが全く存在しないのではなく、多少混在していることがわかった。薬剤性痙攣誘発応答においては、条件Aで見られず、GABAニューロンの割合が高い条件において、GABA受容体阻害剤以外の痙攣誘発剤においても顕著な活動変化が見られた。このことから、痙攣誘発の検出には一定以上のGABAニューロンが必要であることが示唆された。また、薬剤投与によりGABAニューロンの割合が高い条件で、同期バーストが連続して発火する同期バースト群が顕著に見られたことから、GABAニューロンが同期バースト発火の周期性を生み出していることが示唆された。更に、興奮・抑制ニューロンの割合によって薬剤応答の濃度依存性や痙攣検出に有効なパラメータが異なることがわかり、割合に依存した解析法を構築する必要性が示唆された。

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