日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-52
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優秀研究発表 ポスター
ヒト肝キメラマウスを用いた比較トキシコゲノミクス解析による、自社化合物の肝毒性発現メカニズムの予測
*荒木 徹朗川上 哲飯塚 和彦小林 和浩田邉 容子佐藤 則博鶴井 一幸中薗 修
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抄録

 薬物性肝障害は臨床試験において安全性を理由とする開発中止の主たる原因の一つであり、非臨床における薬物性肝障害リスクの評価と予測は長年の大きな課題となっている。我々は、臨床試験において一部の被験者で肝逸脱酵素の上昇を示した自社化合物(以下Compound X)に関し、その肝毒性発現メカニズムについて研究を行ってきた。その結果、Compound Xがマウスやラットの一部系統で肝障害を起こしやすいこと、共有結合能を有すること、in vitroにおいてリン脂質蓄積をもたらすこと、などを明らかにしたが、臨床試験でみられた肝毒性の発現メカニズムを特定することはできなかった。

 PXBマウスはuPA-SCIDマウスにヒト肝細胞を移植したヒト肝キメラマウスである。我々は、Compound Xの肝毒性発現メカニズムを明らかにするため、PXBマウスを用いてCompound Xの14日間反復毒性試験を実施し、試験後の摘出肝を用いてDNAマイクロアレイ解析を行った。さらに、ヒト肝特異的な遺伝子発現変化を明らかにするため、PXBマウスのバックグラウンドであるSCIDマウスと、肝障害への感受性が高かったBALB/cマウスでも同様の実験を行った。

 IPA (Ingenuity Pathway Analysis)を用いて、3系統のマウスでそれぞれCompound X投与により有意に発現変動した遺伝子群のパスウェイ解析を実施し、さらに、3系統間での比較解析を行った。その結果、PXBマウス特異的な遺伝子発現変化として、①小胞体ストレス応答系の抑制、②オフターゲット核内受容体の相違、③脂質代謝関連転写因子の抑制、の3つのパスウェイを見出した。また、BALB/cマウスとPXBマウス間でCompound X投与による発現変動遺伝子を比較したところ、重複するものは少なかった。このことから、PXBマウスで特異的にみられた遺伝子発現変化はヒト肝細胞に由来する変化であり、臨床試験でみられた肝逸脱酵素上昇の発生メカニズムである可能性が示唆された。

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