日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-71
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スーパーラットは何が「スーパー」なのか? ~東京の殺鼠剤抵抗性クマネズミにおける抵抗性獲得機序の探索~
*武田 一貴池中 良徳田中 和之中山 翔太谷川 力水川 葉月石塚 真由美
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抄録

 野生げっ歯類はレプトスピラやハンタウイルス感染症、ペストなど種々の人獣共通感染症を媒介するため殺鼠剤による駆除は不可欠である。しかしワルファリン(Wf)など殺鼠剤に対し抵抗性を有する個体群が殺鼠剤使用頻度の高い世界各地の都市に出現している。現在抵抗性ラットに有効な防除策は乏しく、抵抗性獲得機序の解明と新規防除策の提案は急務である。

 これまでWf抵抗性の原因はWfの標的分子ビタミンKエポキシド還元酵素の遺伝子変異だと考えられてきたが、発表者が東京の殺鼠剤抵抗性ラットでWf肝灌流試験を実施した所、肝臓でのWf代謝が亢進していた。このため、抵抗性にWfの代謝・排泄も寄与することが示唆された。また、肝臓から薬物代謝酵素シトクロムP450(CYPs)を含む酵素画分を調製しWf代謝試験を実施すると、ミクロソームへNADPHを添加した所CYPsの酵素活性に大きな差は認められなかったが、S9画分へNADP+を添加するとCYPsによる代謝活性が抵抗性群で大きく上昇した。このため、肝灌流で確認された高代謝能はCYPs自体の変化ではなく、その活性に必要なNADPH産生能に起因するということが示唆された。また、実際に抵抗性ラットS9画分ではNADPHの産生が亢進していた。

 このため、抵抗性ラットで確認された高NADPH産生能の責任分子を特定するため、肝臓でNADPH産生を主に担うペントースリン酸経路のNADPH産生酵素、グルコース6リン酸脱水素酵素(G6PD)について、シークエンス解析とウェスタンブロットによる発現量の定量を行った。しかしG6PD発現量自体には有意な差は認められず、アミノ酸配列においても変化は認められなかった。

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