日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: S1-2
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シンポジウム1
毒性分子の生体内初期反応解析に基づく毒性予測戦略
*植沢 芳広
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抄録

化学構造に基づく化学物質の毒性予測モデルの構築においては、毒性発現メカニズムが未知かつ複雑なため考慮できないこと、モデル構築手法が十分に洗練されていないこと、さらには毒性データ自体の入手が困難であることによって、実用に足る予測精度を得ることが難しい場合が少なくない。そこで演者は、(1)有害性発現経路(AOP)における分子起始反応(MIE)関連活性情報の活用、(2)ディープラーニング等の人工知能/機械学習技術の適用、および(3)毒性/副作用データベースの活用によってこれらの問題点を克服するための戦略を提案してきた。MIE関連活性情報としては、米国NIH、EPA、およびFDAの共同研究プロジェクトであるTox21で構築された10,000化合物ライブラリー(Tox21 10Kライブラリー)に対する核内受容体・ストレス応答経路のアッセイ結果158種類を格納したMIEデータベースが公開されている。このMIEに対する活性は人工知能技術を援用したQSARモデルによって予測可能である。一方、日本のPMDA、JAPIC、米国のFDAなどの機関は集積された医薬品副作用情報を大規模なデータベース(JADER、FAERS、JAPIC-AERS)として整理・提供している。これらはヒトに対する膨大な化合物-慢性毒性データベースと考えることができる。さらに、国内には化学品の法規制において重要な毒性データベースであるHESSが存在する。これらの毒性・副作用データベースとMIE予測モデルを統合することによって、適用範囲が広く堅牢な毒性予測モデルが構築可能である。なお、以上の戦略は2016年日本化学工業協会LRI委託研究テーマとなり、現在ではAMED「創薬支援インフォマティクスシステム構築」および経産省「省エネ型電子デバイス材料の評価技術の開発事業」プロジェクトに採用されている。

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© 2018 日本毒性学会
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