日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: S1-3
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シンポジウム1
毒性関連大規模データベースの利用とリードアクロスによる安全性評価
*山田 隆志
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抄録

 WSSD2020年目標の達成に向けて、膨大な数の試験データのない化学物質の安全性評価が大きな課題となっており、現状のin silico評価の技術レベルの向上、適用範囲の拡大、安全性評価での実運用が強く求められている。近年OECDでは、AOP(毒性発現経路)の開発が精力的に進められており、QSARの適用が困難と考えられる複雑な毒性エンドポイントについて、AOPに基づいてin silico、in vitro、in vivoの情報を組み合わせて化学物質の安全性を評価する統合的アプローチ(IATA)のコンセプトが整理されつつある。2020年以降は動物実験への依存度を軽減しつつ、化学物質が発現しうるヒトへの毒性を高精度で予測するin silico評価技術を確立し、IATAに基づいてヒト健康リスク評価のストラテジーを進化させる動きが加速すると考えられる。

 我々は、これまでにヒト健康影響に関するスクリーニング毒性エンドポイントのうち、遺伝毒性に関して、安衛法により実施されたAmes変異原性データから大規模のデータベースを構築した。これをデータセットとして世界中のQSARベンダーに提供することにより、QSARツールの改良を目指す国際共同研究を先導し、予測精度の向上を達成した。さらに、in vitro染色体損傷に関連した新規構造アラートを構築し、染色体損傷の予測性の向上を図った。反復投与毒性に関しては、代謝、メカニズム、毒性データを統合したHESSプラットフォームを開発した。カテゴリーアプローチによるリードアクロスのケーススタディーを作成し、OECD専門家によるレビューを経て、本手法の国際的な調和へ向けた経験を積み重ねてきたところである。リードアクロスでは、信頼性のある試験データを用いて適切な類似性の仮説を設定し、評価の透明性と再現性を確保することが重要である。さらにデータやリソースの制限等に起因する種々の不確実性を解析することによって、利用目的に対する不確実性の許容レベルを議論することが必要となる。

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