日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: S10-3
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シンポジウム10
活性イオウ分子:親電子ストレスに対する防御的役割とその細胞内過剰蓄積による還元ストレス
*秋山 雅博鵜木 隆光蕨 栄治新開 泰弘石井 功赤池 孝章熊谷 嘉人
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抄録

【背景・目的】日々の生活において、我々の体は様々な親電子ストレスに晒されている。例えば、食生活、生活環境やライフスタイルを介して摂取される環境中親電子物質がある。活性イオウ分子(Reactive sulfur species, RSS)は、高い抗酸化性/求核性を呈するため、生体内レドックスホメオスタシスの鍵分子であることが示唆されている。これまでに、我々は、RSSが環境中親電子物質の捕獲・不活性化を介して、生体内の親電子ストレスを制御することを示した。このことは、生体内におけるRSS量の保持が環境中親電子物質に対する生体防御に重要であることを示唆する。一方、生体内での過剰な求核物質の蓄積はレドックスバランスを乱し、疾患リスクを高める報告がなされており、酸化ストレスに対し還元ストレスという概念が近年提唱されている。以上を統合すると、RSSの生体内量は厳密に制御されており、その破綻は健康リスクを高めると考えられた。そこで本研究は、生体内RSS量の制御機構と、その破綻による生体影響を検討した。

【結果・考察】生体内RSS産生酵素の一つであるcystathionine-γ-lyase(CSE)の欠損またはその高発現(マウスまたは、初代肝細胞)及び外因性RSS投与により、生体内RSS量を変化させた。その結果、CSE欠損による生体内(細胞内)RSS量の減少はメチル水銀やカドミウムなどの環境中親電子物質に対する感受性を上昇させた。一方、細胞(臓器)内でのRSS量の増加は細胞外へ放出されることで、一定期間で定常レベルに戻り、一定量以上のRSSの増加は毒性を引き起こすことを見出した。これらの結果より、高い求核性を持つRSSが細胞内に高濃度蓄積した際には、生体は余剰なRSSを細胞外へと積極的に排出する輸送システムを介して恒常性を維持していることが示唆された。

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