日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: S21-2
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シンポジウム21
総合的試験戦略-胚・胎児発生毒性(EFD)評価を中心に-1.概要とEFD試験戦略例
*関澤 信一
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抄録

 生殖発生毒性を検討する上でどのような戦略を取るべきか、生殖発生毒性のエキスパートだけでなくそれ以外の入門者にも理解できるように、ICH S5(R3)ガイドラインの改定が実施されてきている。胚・胎児毒性の検討は、毒性があった場合には次世代に大きな影響を与える可能性があることから、妊娠する可能性のある女性が治験に組み入れられる時点でそのリスク評価は終了していなければならない。しかしながら、妊婦或いは妊娠している可能性のある女性に被験薬が曝露された場合に限定される特殊な毒性ということもあり、また医薬品の開発段階においては当該女性が投与対象になる場合・機会はそれほど多くはないことから、評価の時期や方法は多様であって然るべきである。ICH S5(R3)ガイドライン改定案では、胚・胎児発生毒性を評価する際の考慮事項として、対象患者集団、被験物質やその関連物質に関する薬理作用及び(生殖)毒性、ヒトや動物の遺伝学的な情報等を挙げているが、それ以外にハザードやリスクを特定できる信頼性の高いin vitroや非哺乳類を使用した試験法(代替試験法)からのデータも利用可能としている点が新たに加わっている。すなわち、ICH S5(R3)ガイドライン改定案では以下の3つの胚・胎児発生毒性の評価戦略が提示されている: 1)EFDリスクを評価できる十分なデータがある場合、2)通常のEFD試験を実施する場合、3)代替試験法が利用できる場合。ICH S5(R3)ガイドラインの改定において薬理活性の有無や標的特異性等についての概念が導入されることにより、上記1)及び2)のケースである既存の評価戦略もより明瞭なものとなってきている。また、3)のケースは新規の評価戦略であり、現時点では限定的な条件下における利用にはなるものの、代替試験法の継続的な活用が3Rに貢献し、また、将来的には使用条件が限定されない戦略になっていく可能性を秘めていることから、この戦略の可能性について前向きな期待を共有したい。

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