日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: S22-1
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シンポジウム22
化学物質のがん原性評価の動向
*西川 秋佳
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抄録

 現行の発がん性評価においては,2つの主要な課題といくつかの小さな課題がある.主要な課題の1つは,遺伝毒性発がん物質の閾値に関するものであり,腫瘍性病変が発現した標的器官に遺伝毒性が実際に関与しているかどうかを明らかにするためには,gpt deltaのようなレポーター遺伝子を有するトランスジェニック動物が有用であり得る.また,in vivoでの遺伝毒性が陽性であっても,多段階の発がん過程における代謝活性化,細胞増殖,アポトーシス,免疫抑制などの重要な事象のなかにはそれぞれに生物学的な閾値を想定できる可能性がある.もう1つの大きな課題は,ヒトのリスクに対する動物データの外挿に関する点であり,発生増加した腫瘍性病変の種特異性を明らかにするために,mode of action (MOA)に基づくweight of evidence (WOE)アプローチは非常に有用である.そのために,p53nrf2またはCARノックアウトマウスのようなトランスジェニック動物は発がんメカニズムを解明するのに役立つはずである.将来的には,in silicoおよびin vitroアプローチは,多数の化学物質/医薬品の遺伝毒性および発がん性をスクリーニングするための強力なツールと期待される.確実に3Rsが進む現在,OECDで進められているadverse outcome pathway (AOP)やintegrated approaches to testing and assessment (IATA)の早期の公定化が望まれるが,特に発がん性評価に関する期待は大きいと言える.今後の発がん性評価は,迅速化と精緻化(テイラーメイド化を含む)の相反する二方向に向かうものと予想される.

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© 2018 日本毒性学会
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