日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: S23-5
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シンポジウム23
哺乳類細胞を用いるin vitro試験の進歩
*三島 雅之
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抄録

In vitro哺乳類細胞を用いる試験系は、主に染色体構造異常を検出する試験系がAmes試験を補完する目的で多用されている。遺伝子突然変異は発がんの最も重要な要因であり、哺乳類細胞を用いる遺伝子突然変異試験系は30年以上前に開発されたものの、その利用は限定的である。1970年代に開発された細菌の遺伝子突然変異を検出するAmes試験は、毒性試験としては例外的に早く安く実施できるために膨大なデータと経験が蓄積され、現在もなお遺伝毒性評価の中心的役割を担っている。その一方で、バクテリアと哺乳類の代謝やDNA修復系の違いによるAmes試験の外挿性の問題も明らかになっている。近年、様々な製品に使用されつつあるナノマテリアルはAmes菌株の細胞壁を透過しないため、Ames試験による評価は意味をなさない。こうしたことから、哺乳類細胞を用いるin vitro遺伝毒性評価の役割が再認識されている。レポーター遺伝子をシャトルベクターに組み込んで遺伝子導入したトランスジェニック動物の有用性が明確になったことで、そうした動物から樹立した細胞株や初代培養細胞を用いる、Big Blue、MutaMouse、plasmid mouse、gpt delta、ΦX174、supFなどの新しいin vitro試験系が開発されている。これらは、従来の試験系の欠点を改良し、試験遂行の労力や得られる情報の点で大きく進歩している。また、3次元培養を用いることでヒトへの外挿性を高めようとする試みも行われている。染色体の切断と分配異常のMOAを鑑別して定量的なリスク評価につなげる取り組みでは、スクリーニングとして産業応用可能な方法も開発されている。近年、in vitro哺乳類細胞試験から様々な情報を得ることが可能になっているので、進歩した試験法の性能をレビューし、それらがどんな場面で有効に機能するのか、その可能性を議論する。

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