日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: S23-4
会議情報

シンポジウム23
実用化段階にある新しいin vivo試験
*濱田 修一
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

肝臓小核試験は,薬物代謝の主要臓器である肝臓において小核誘発性を評価できる点で非常に優れた試験法である.特に不安定な代謝物が肝発がん性を示す物質は骨髄小核試験で陰性になりやすいため,肝臓小核試験による評価は極めて有用である.前回のInternational Workshops on Genotoxicity Testing (6th IWGT,2013 in Iguazu)でも,肝臓小核試験の有用性は高く評価されたが,異数性誘発物質や非発がん物質でのデータが少ないこと,細胞毒性の評価法などの課題も示された.我々は6th IWGT後の4年間に異数性誘発物質や非発がん物質でのデータを蓄積し,その他の課題にも対応して肝臓小核試験は実用段階に入った.昨年末,東京で開催された7thIWGTにおいてこれらの追加データを示し,肝臓小核試験はその評価化合物の数においてもtypeにおいてもOECDガイドライン化に充分なバリデートがなされているとの合意を得た.ただし,日本と欧米で一般毒性試験に用いる動物の週齢に差があることから,肝臓小核試験結果への加齢の影響についての評価が必要であるなどのコメントもあった.今後はこれらの課題に対応し,OECDガイドライン化を目指す予定である.消化管小核試験,肺小核試験については,OECDガイドライン化にはさらに多くのデータが必要であるとの意見が多かった.肺小核試験については開発がスタートしたところであり,今後多くのデータが必要と考えるが,消化管小核試験に関しては肝臓小核試験に匹敵する蓄積データがある.消化管を用いた小核試験は,経口投与された試験物質により高濃度で直接曝露される胃,がんの発生率の高い大腸において小核誘発性を評価できる点で優れている.また,腸内細菌により遺伝毒性物質に変換される可能性もある.これらのことを十分考慮し,今後のガイドライン化に向けた対応を考える必要がある.

著者関連情報
© 2018 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top