日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: S23-6
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シンポジウム23
メカニズムに基づいた遺伝毒性の評価
*松田 知成
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抄録

レギュラトリー的には、遺伝毒性はいくつかの試験の組合せで行う必要があり、染色体の異常を検出する試験(染色体異常試験や小核試験)は良く用いられる。染色体異常はDNA損傷で誘発されるが、一方、DNA損傷を介さずに誘発されることもある。例えばカフェインはATMを阻害することで染色体異常を誘発する。その他、Chk1やPlk1の阻害剤も染色体異常を誘発する。染色体異常誘発メカニズムがDNA損傷の場合と、これらタンパク質阻害の場合では、閾値に対する考え方も違ってくる。従って、DNA損傷を介する遺伝毒性と、そうではないものを区別して評価できる遺伝毒性試験が求められる。我々の研究室では長年様々な遺伝毒性試験を開発し、その要望に応えようとしてきた。まず、DNA損傷を検出する方法として、「DNAアダクトーム法」を開発した。この方法は、LC/MS/MSを用いてDNA損傷を網羅的に直接検出しようとするものである。また、1分子リアルタイムDNAシーケンサーを用いて、極低頻度の突然変異を直接定量する方法、「SMRT変異検出法」を開発した。また、DNA損傷応答をライブセルイメージングで検出する方法である「MDC1アッセイ」も開発した。MDC1タンパク質は、DNA損傷によりヒストンH2AXのリン酸化が起きると、それに結合する。よって、MDC1に蛍光タンパクを付けておけば、DNA損傷で生じるMDC1のフォーカスを観察することができる。この系は、DNA損傷の検出に使えるばかりでなく、DNA損傷応答の阻害を評価することもできる。実際、エームス陰性、染色体異常陽性の物質について、DNA損傷応答の阻害を評価したところ、いくつかの物質でこの活性が見つかった。従って、これら物質ではDNA損傷応答の阻害により染色体異常を誘発していることが示唆された。

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