近年、薬剤や化合物の暴露に起因する肝障害のバイオマーカー候補として血中microRNA (miRNA) が注目されており、様々な非臨床安全性試験における利用が進展しつつある。血中miRNAに関連した我々の最近の研究紹介と、今後の課題について考える。(1)我々はニューキノロン系抗菌薬とスタチンの併用による横紋筋融解症マウスモデルを確立した。さらに、本年会でGSHを低下させるのみで、急性腎障害マウスモデル確立した報告をした。肝由来miR-122-5pのみならず、心筋由来miR-208-3p、骨格筋由来miR-206-3p、および心筋と骨格筋両由来miR-133-3pの血中での発現変動profileが、臓器別病態と重篤度等の予測に有効である。(2)我々は肝細胞障害型、胆汁うっ滞型肝障害および脂肪肝の3つの代表的なDILIについて、病型判断及び早期発見可能なmiRNAの同定を目的とし、各ラット病態モデルを用いて、血漿中miRNAを次世代シーケンサーにより網羅的に解析した結果を、本年会で発表した。発症早期に各病型特異的なmiRNAを同定・評価した。(3)肝類洞内皮細胞は、抗癌剤の副作用の標的となることが知られている。我々は、肝類洞内皮細胞に特異的に高発現するmiR-511-3pを特定し報告した。miR-122-5pはヘパトサイトにのみ由来するため、肝臓の病型のさらなる情報が血液から得られる。抗癌剤治療を中断する副作用である類洞閉塞症候群の予知予防への適用が期待される。(4)同じ系統のげっ歯類に、同一条件で薬剤性肝障害を惹起させても、その重篤度には著しい個体差が認められる場合が多い。この現象がヒトにおけるidiosyncraticな薬剤性臓器毒性と同じ機序であるかは依然として不明であるが、より稀で重篤な副作用の予知予防のさらなる研究が待たれている。