ヒト腸管内には1000種100兆個体を超える細菌が共生している。これらの細菌はヒト腸内細菌と呼ばれ、腸管内に群集構造を形成し、複雑なエコシステムをなしている。微生物由来の遺伝子配列を直接決定するメタゲノム解析などの新たな解析手法の開発により、ヒト腸内環境研究は多くの発展を見せ、肥満、糖尿病、炎症性腸疾患、肝臓がんなどの様々な疾患との関連性が明らかになりつつある。
我々は大腸がんに焦点を当て、その発症に関するメカニズムにヒト腸内細菌がどのように関連しているかを明らかにするため、大規模な疫学コホート研究を行っている。その中で収集しているデータとして、ヒト腸内環境のメタゲノムデータに加え、メタボロームデータ、生活習慣、食生活および内視鏡所見も収集している。これらの統合解析により、大腸がん発症に関連する微生物、代謝物質、および微生物由来代謝経路を見出す試みを紹介する。