日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: SL3
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特別講演
性ステロイドホルモンによる即時性反応を介した高次生理機能
*木村 郁夫
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抄録

 近年、性ステロイドホルモンは性機能への関与だけではなく、母性行動、攻撃行動や情動、節食、リズム、睡眠、そして記憶や学習を含む高次脳機能に至るまでの多彩な機能に関与していることが明らかになってきた。従来、性ステロイドホルモンは核内受容体を介して、生体において種々の生理機能を発揮すると言われてきた。しかしながら、核内受容体を介するにしては、あまりにも即時的なステロイドホルモンにより誘発される反応が多数あり、これらの反応は細胞膜上の受容体を介して行われると予想されていたが、その分子実体は現在まで明らかにされていなかった。近年、この性ステロイドホルモンの細胞膜上の受容体として、エストロゲンに対し、Gタンパク共役型受容体GPR30、またプロゲステロンに対し、mPRファミリーや、MAPRファミリーが同定された。我々は、このうちのMAPRファミリーであるneudesinとneuferricinを世界で初めて単離・同定し、neudesinが神経栄養因子であり神経系を介して食事性肥満に関わる重要な因子であることを明らかにした。これらの細胞膜上性ステロイドホルモン受容体は、一般的に知られている核内受容体を介したgenomicな作用に対し、即時性のnon-genomicな作用(MAPK経路の活性化や細胞内Ca濃度の上昇等)を有する。そのために、核内受容体では証明のできなかった全く新たな性ステロイドホルモンの機能の作用機構解明につながると期待されている。 したがって、我々は近年発見されたプロゲステロンの細胞膜上受容体のmPRおよびMAPRファミリーに注目し、性ステロイドホルモンの即時的反応の解明とそれに基づく生体機能調節機構の解明を進めている。本講演において、これら我々が得た知見および最近のこの分野の動向について概説する。

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