日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: W1-2
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ワークショップ1
医療機器の生物学的安全性評価に関する国際標準化状況
*中岡 竜介坂口 圭介蓜島 由二
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抄録

 現在、我が国では、未来投資戦略2017をはじめとした国家的施策により、日本発の新医療機器の実用化が推進されている。しかしながら、医療機器の実用化にはそのリスクに応じた各種評価を行うことが必須となる。例えば、生物学的安全性評価については、厚生労働省通知「医療機器の製造販売承認申請等に必要な生物学的安全性に関する基本的考え方」を十分理解した上で、対象機器の特性を踏まえて適切な評価法を選定・新規構築する必要がある。

 医療機器の生物学的安全性評価の重要性が認知され始めた1989年、国際標準化機構においてTC 194「医療機器の生物学的評価」が設立され、世界各国の医療機器産官学関係者が参画して医療機器の生物学的評価に必要な国際標準化文書が作成されてきた。その結果、現在、当該TCで作成されているISO 10993シリーズの基本文書となるPart 1 “Evaluation and testing within a risk management process”は世界各国の規制及び業界で引用・使用されており、我が国でも上記通知に利用されている。現在、Part 1は、医療機器の適用部位や使用時間等を考慮した推奨試験パッケージの再整理、化学分析を用いたリスク評価と毒性学的閾値(TTC)の考え方の導入等を中心に改定が進んでいる。Part 1改訂版は今春頃に発行される予定であり、それに伴い上記通知も新しいPart 1に整合させるための改定が必要になる。また、TTCを医療機器のリスク評価に導入するため、医療機器からの溶出物許容量に関する文書であるPart 17、医療機器材料の化学分析に関するPart 18も、新しいPart 1に整合させる形で改定が進んでいる。しかしながら、これらの文書の改定においては、TTC等の概念に基づいたリスク評価が実践されている医薬品分野の考え方を直接転用する傾向があるとともに、化学分析のウエイトが過度となる可能性もある。また、リスク評価を行うための分析パッケージも定まっていないことから、今後の改定方向には十分留意する必要がある。本講演では、上述した文書の改定内容等を概説するとともに、それらの成立に伴い国内規制に及ぼしうる影響を紹介する。

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