日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: W3-2
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ワークショップ3
実験動物の網膜・視神経における自然発生病変: OCTで検出できるものとできないもの
*荒木 智陽
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抄録

医薬品の安全性試験における一般的な眼科学的検査では、細隙灯顕微鏡(スリットランプ)を用いて角膜、虹彩、中間透光体(前房、水晶体、前部硝子体)を、また、倒像検眼鏡及び非球面レンズを用いて後部硝子体及び眼底を精査する。特に網膜や視神経は、異常が生じると視覚に大きな影響を及ぼすリスクが高いため、的確な検査が求められる。しかしながら、一般状態観察では視機能の異常を捉えることが難しい。長期反復投与による安全性試験では、発現する変化が緩徐であることも少なくないため、眼科学的検査では微細な初期変化も的確に捉え記録しておかなければならない。被験物質投与時に発現する網膜毒性所見には、自然発生の病変・所見と類似しているものも多い。種々の自然発生病変からその網膜の状態を理解しておくことは、網膜や視神経毒性のリスク評価をする上で重要である。特に眼底の色調は、網膜の厚さによっても変化がみられるため、色調と網膜形状の関係性はよく理解しておく必要がある。しかしながら、一般的な眼底検査では、眼底組織の各層の位置関係を三次元的に理解するには相当な熟練が必要であり、網膜の軽微な変化については、その局在を特定することが難しい。近年、眼底組織の断層像を経時的に観察できる光干渉断層計(Optical Coherence Tomography,以下OCT)検査が、実験動物の分野においても応用されてきている。OCT検査は、異常が網膜のどの層に局在するかを明らかにできるため、一般的な眼底検査では判断が難しかった所見についても的確な評価が可能となってきている。

本講演では、これまで新日本科学で実施したOCT検査により検出されたラット、イヌ及びサルの眼底における自然発生病変の症例をもとに眼底の色調変化が示す網膜の状態について紹介する。また、OCTでは検出できない病変も示し一般的な眼底検査で注意すべき色調の見方なども述べたい。

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