日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: W5-2
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ワークショップ5
In silico評価によるヒト催不整脈リスク予測の進展
*久保 多恵子坪内 義山田 徹坂東 清子芦原 貴司
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抄録

現在、薬剤の心臓安全性評価は、ICHガイドラインS7B/E14に基づき、心室の再分極遅延に伴う活動電位持続時間の延長、すなわちQT延長の潜在的な可能性を指標として評価され、これまで致死性不整脈の発症による薬剤の市場撤退の回避など一定の有用性が認められてきた。しかし、実際には不整脈は無かったにも関わらずQT延長のみを理由として医薬品候補化合物の開発が中止となった可能性が指摘され、現在CiPA(Comprehensive in vitro Proarrthythmia Assay)を中心としてガイドラインの改定が議論されている。その議論の中で、非臨床では複数のヒト心筋イオンチャネルへの影響の評価とin silico評価を組み合わせることにより催不整脈リスク評価を行うこと、その結果をヒトiPS細胞由来心筋を用いた評価で検証すること、臨床においてはQT延長以外の新たなバイオマーカーを活用することなどが提唱されている。

このような流れから、国内では日本安全性薬理研究会においてin silico情報技術交流会としてiSmartが発足し、国内研究者のヒト心筋細胞モデルを用いたin silico評価の理解を深め、薬剤による催不整脈リスク予測のためのin silico評価の検証作業を通して創薬研究に有用なモデルの構築やその活用を提案する活動が進められている。また、我々は心室の線維構造を組み込んだバイドメイン2次元心室壁モデルを作製し、心室筋活動電位及び心電図のシミュレーションを行い、心臓安全性評価において心筋細胞モデルに留まらない心筋組織モデルの活用を検討している。本発表では、現在の心臓安全性評価におけるin silico評価の動向や我々の作製したモデルによる薬剤の心電図への影響を評価したシミュレーション結果を紹介し、今後の心臓安全性評価におけるin silico評価の有用性について議論したい。

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