日本毒性学会学術年会
第45回日本毒性学会学術年会
セッションID: W6-5
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ワークショップ6
腎幹前駆細胞による再構成ネフロン様構造体を用いたin vitro 腎毒性試験法
*大林 徹也古倉 健嗣喜多村 真冶
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抄録

  In vitroでの薬理薬効試験や安全性試験法開発で生体組織に近い性質を持つ三次元細胞組織体の活用が期待されている。しかし一般的には幹細胞から三次元細胞組織体を構築する手順は複雑である。腎臓はその構造が複雑であるため培養細胞を用いて腎臓の機能をin vitroで評価することは困難である。

 喜多村がラット腎臓近位尿細管S3領域から樹立した腎前駆/幹細胞(KS細胞)は成長因子の存在下かつマトリゲルを用いた三次元培養によって分化し、ボーマン嚢様の袋構造と近位尿細管様の管構造を含むネフロン様構造体を形成する。そこでラットKS細胞由来のネフロン様構造体を用いたin vitro腎毒性試験法の開発を試みた。この試験法では、①再現性を高めるためにシンプルなプロトコルとする、②客観性を持たせるために定量的な評価法とすることを重要視した。

 使用する培地は2次元培養用と3次元培養用の2種類のみとする、3次元培養期間中は培地交換を必要としないといったシンプルなプロトコルを確立することにより、同時に作成した複数のネフロン様構造体で均一な形態を構築することができた。さらにこのネフロン様構造体にシスプラチンを投与したところ細胞死の誘導および近位尿細管様構造の伸長の阻害といった障害を確認することができた。

 また生体に無害な近赤外光を用いた光干渉断層画像撮影法(Optical Coherence Tomography: OCT)技術を活用して、非侵襲的にネフロン様三次元構造体の形態を解析できるシステムを構築した。このシステムを活用することにより細胞にダメージを与えることなくネフロン様構造体の形態変化を定量的に解析できるようになった。このシステムは全サンプルを非破壊(非侵襲的)検査で品質評価することが可能であり、三次元構造体を用いた毒性試験法のプロトコルの標準化に貢献すると考えている。

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