日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-13
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一般演題 口演
Bisphenol A(BPA)がC.elegansの寿命に与える影響の検討
*杉谷 篤志大黒 亜美今岡 進
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抄録

NF-E2 related factor2(Nrf2)は抗酸化因子や薬物代謝酵素の転写を誘導することで酸化ストレス耐性やデトックス作用を促進する。Nrf2は主にKeap1により制御されており、Keap1のシステイン残基のチオール基がラジカルによって修飾されることでその活性が低下する。また、環境化学物質であるビスフェノールA(BPA)がNrf2発現量を増加させ、その下流因子であるHO-1、MDR1 mRNAの転写誘導を促進することを明らかにしている。これは、BPAによるCa²+濃度の上昇がNOSの活性化を介してNO量を増加させ、Keap1のニトロシル化を促進したためであることを明らかにした。近年、Nrf2はHO-1などの細胞保護遺伝子の転写を誘導することで、老化の予防に重要であることが考えられている。そこで、BPAがC.elegansの寿命に与える影響について検討した。C.elegansにおいて、Nrf2はSKN-1として保存されている。実際にskn-1の変異株は野生株と比べて寿命が短いことを明らかにしており、SKN-1がNrf2と同様に老化の予防に関与することが考えられている。また、SKN-1にBPAが与える影響を明らかにするために、その下流因子であるgcs-1 にBPAが与える影響について検討した。その結果、BPAはgcs-1 mRNA量を増加させることを明らかにした。そこで、BPAの曝露時のC.elegansの寿命について検討したところ、予想に反してBPAはC.elegansの寿命を短縮させたので、このメカニズムについて検討した。まず、長寿因子であることが知られているSir2,1やFOXO転写因子のホモログであるDAF-16に着目し、これらの変異株で検討を行った。しかし、野生株と同様にBPAによる寿命の短縮が見られた。一方で、skn-1の変異株では野生株と比べてBPAによる効果が減少した。そこで、更にgcs-1の変異株についても検討したところ、skn-1の変異株と同様に野生株と比べてBPAによる効果が減少した。

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