日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: O-14
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一般演題 口演
実験動物を用いた安全性・リスク評価に携わる人材育成の必要性
*小島 肇小川 久美子西川 秋佳若林 敬二鰐渕 英機林 真福島 昭治遠山 千春
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抄録

 動物実験削減の動向が世界的に拡大している。2013年には欧州で化粧品原料開発のための動物実験が禁止となった。その後、日本においても多くの化粧品企業が動物実験の廃止を宣言した。医薬品開発においては、長期毒性試験である発がん性・生殖毒性試験における動物種削減が検討され、ならびに動物実験を開発の後期にずらして行うことによる動物実験の実質的な削減が浸透しつつある。この動きは食品業界にも広がり、食品の健康増進効果を証明するための動物実験の廃止を検討している企業やすでに動物実験の廃止を宣言している企業が増えている。

 ヒトがある目的を持って食する食品添加物や保健機能食品のみならず、意図的に摂取することは想定されていずとも体内に取り込まれることが予想される農業用医薬品や一般化学物質では、その安全性を確保するためには基本的に動物を用いて試験することが必須である。しかしながら、安全性確保における国際調和という企業の立場もあり、現在は動物実験削減に歯止めがかけられていない。このまま行き過ぎた動物実験の不要論を放置することは、大学における研究・教育を軽視し、安全性・リスク評価に携わる人材育成を衰微させる恐れが極めて大きい。また、現在、安全性評価分野で活躍している熟練した人材と共に知的財産の流出にもつながりかねない。

 このような状況を正しく把握し、動物実験の3Rsを認識した上で、今後の動物実験を行う人材を確保するため、今後のわが国における動物実験の在り方をまとめ、動物実験を用いた安全性・リスク評価の重要性について、日本毒性学会として社会に訴求することを提案したい。

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© 2019 日本毒性学会
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