【はじめに】 ナノ材料の粒子径は、材料の均一性を示す指標として重要な項目の一つである。また、ナノ粒子の様々な一般消費財への利用が増加しており、それに伴い、ナノ粒子が及ぼす環境影響や生体影響が懸念されている。インジウム化合物は、フラットパネルディスプレイや半導体化合物において重要な材料として知られており、厚生労働省は2013年に特定化学物質障害予防規則(OPHSCS)で規制されている物質のリストを改正し、インジウム化合物を追加した。ナノ粒子の粒子径を測定する手法としては、動的光散乱法、電子顕微鏡法やFFF(field flow fractionation)法が代表的であるが、それぞれに特徴と課題がある。シングルパーティクル(SP)-ICP-MS法は、ICP質量分析法の特長である高感度、高選択性、迅速測定、簡易なデータ処理などの特長を利用したナノ粒子の新たな分析手法で、粒子のサイズとサイズ分布、粒子濃度を測定できる手法として定着しつつある。
本検討では、パーキンエルマー社製ICP-MS NexIONを用い、SP-ICP-MS法におけるナノ粒子径・粒子濃度の測定精度について検証した。また、生体試料中ナノ粒子測定への適応も試みた。
【実験】 様々な濃度に調製した直径60nmの金ナノ粒子懸濁液を測定し、その結果からSP-ICP-MS法の粒子径および粒子濃度測定能力について議論する。また、ITO (インジウム-スズ酸化物 Indium-tin oxide )ターゲット研削作業者から得られた尿および血清試料について、SP-ICP-MS法を用い、試料の取り扱い方法の検討およびインジウムナノ粒子の測定を実施した。これらの結果についても報告する。