日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-105
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ポスターセッション
異なる投与器具を用いた多層カーボンナノチューブ(MWCNT)のラット気管内投与試験における投与物質の生体内分布及び生体影響の比較
*前野 愛坂本 義光北條 幹湯澤 勝廣長谷川 悠子長澤 明道久保 喜一安藤 弘海鉾 藤文田中 和良鈴木 俊也猪又 明子守安 貴子広瀬 明彦中江 大
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抄録

【背景】ナノ物質の呼吸器毒性評価において、吸入ばく露の代替法として気管内投与が用いられている。投与には主に経口ゾンデあるいはスプレー式ゾンデが用いられるが、両者による生体影響の差異を比較した報告は少ない。本研究はその点に注目し、MWCNTを投与したラットについて病理組織学的に比較検討した。【材料・方法】動物は、F344雄性ラットを用い、経口ゾンデ(F群;10匹)あるいはスプレー式ゾンデ(S群;10匹)によりMWCNT(MWNT-7)を62.5 μg/ラット/回の用量で、1日おきに8回、気管内に投与した。最終投与翌日に解剖し、胸郭ごと胸腔内臓器を固定し、気管、肺及び全身のリンパ節を病理組織学的に検索した。また、125 μg/ラットの用量で両器具を使って単回投与した動物を、投与翌日、4、8、12、16週後にそれぞれ3匹ずつ剖検し、気管を肉眼的に観察した。【結果】MWCNTは肺門付近から臓側胸膜までび漫性に存在したが、壁側胸膜には認められなかった。リンパ組織への移行は縦隔リンパ節に多く、他ではほとんど認められなかった。肺ではMWCNTの沈着に関連した肉芽腫性炎症が認められ、炎症の程度は左葉と右後葉で強かった。以上について、F・S両群間には、明らかな差を認めなかった。一方、気管では顕著な差があり、MWCNTの沈着を反映した黒色斑が、肉眼的にS群でより強く認められた。組織学的には、粘膜下にMWCNTを内包する大型の肉芽腫が存在し、一部では粘膜上皮の扁平上皮化生が見られた。気管の黒色斑は単回投与実験において、F群では投与翌日にのみ、S群では16週間後まで観察された。【考察】S群では、投与時に呼吸器に強い圧力がかかったことが推察されるが、気管とその直近周囲を除けば、胸腔内の各部におけるMWCNTの沈着や炎症反応の程度に、F群と顕著な差異が見られなかった。従って、長期観察後に肺の増殖性病変を誘発し得る用量の投与実験において、投与器具の差異による肺への影響は少ないものと考えられる。

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