日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-115
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ポスターセッション
ラットを用いた幼若動物試験へのプレパルス抑制検査の導入
*室田 尚哉佐々木 幹夫登内 哲央伊藤 愛里小田部 耕二佐藤 伸一
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抄録

 聴覚性驚愕反応(acoustic startle response; ASR)とは,生体が突然大きな音を聞いたときに生じる反応である.しかし,ASRを引き起こすような音刺激(startle pulse; SP)の直前に比較的小さな音刺激(prepulse; PP)が提示されると,ASRは抑制される.この現象をプレパルス抑制(prepulse inhibition; PPI)と呼ぶ.この現象は中枢における感覚情報制御機能(i.e., sensorimotor gating)の指標であり,統合失調症などの精神疾患によってPPIが低下されることが知られている.ICH S11「小児用医薬品開発の非臨床安全性試験」のガイドライン案では中枢神経系の評価の行動検査項目としてPPIを取り上げることが検討されており,今後,ICH S11のガイドラインが発効されれば,幼若動物試験にPPI検査を組み込むことも必要であると考えられている.

 PPIの発現にはPPの音圧,PPとSPの刺激間間隔,試行間間隔,SPに対する馴化の有無など,多くの実験条件を適切に設定する必要があるが,これら実験条件は研究施設によって僅かに異なっている.また,PPIは(1)性差,(2)検査の時間帯,(3)動物の週齢,(4)雌動物の性周期などの影響を受けることが知られており,幼若動物試験にPPI検査を組み込むに際しては,これらの要因を考慮に入れた試験デザインを構築することが重要である.

 本発表では雌雄のSD系ラットを使用して,安定したPPIを発現させ得る自施設における実験条件を紹介し,上記(1)から(4)の要因がPPIに与える影響の有無について報告する.さらに,幼若動物試験で実施する他の検査(オープンフィールドテスト,水迷路など)がPPI検査に与える影響も検討し,より適切な試験デザインについて考察する.

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© 2019 日本毒性学会
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