日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-116
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ポスターセッション
神経行動毒性のメタ解析(その5):農薬(殺虫剤)の毒性評価における一般毒性試験と神経毒性試験の比較調査
*高橋 宏明新田 直人笛田 由紀子渡辺 正人
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抄録

 農薬の分野では、作用メカニズムのみを強調する議論や、散布環境に生息する生物への作用を食物経由のヒト健康影響にそのまま当てはめた議論が見受けられる。特に、殺虫剤はヒトにも備わった神経メカニズムをターゲットとする剤が多いこと、歴史的に重篤な中毒例があったことから、議論されることが多い。一方、わが国では2000年以降の開発において脳神経系に対する影響は神経毒性試験で評価され、現在ではかなりの知見が蓄積されている。今回、殺虫剤の脳神経系への影響に着目して、一般毒性試験と神経毒性試験で得られた公開情報を比較調査し、神経毒性試験について考察する。

 公開された農薬抄録について、ラット経口投与の急性毒性試験、急性神経毒性試験、90日毒性試験、90日神経毒性試験を調べた。2019年1月の時点で、57剤の殺虫剤の情報が公開されていた。有機リン系、カーバメイト系、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系、その他に大別された。必須である急性毒性試験、90日毒性試験は1剤を除いた全ての剤で実施されており、急性神経毒性試験は36剤で、90日神経毒性試験は41剤で実施されていた。公開された未実施の理由は急性もしくは90日毒性試験で神経系への影響が認められないためと述べられていた。急性並びに90日神経毒性試験共に全ての剤で必須検査(FOB、機能検査、感覚運動検査、神経病理)が実施され、追加要求の検査(慣れ、学習・記憶)を検査している例は1剤のみであった。

 全ての剤の急性並びに90日神経毒性試験で神経病理学的変化は認められなかった。急性神経毒性試験では急性毒性試験と類似した症状が観察された。90日神経毒性試験では高用量でのみFOBに所見が散見されたが、FOBを含んだ神経毒性の検査項目がLOAELの所見となる例は殆どなかった。90日神経毒性試験のLOAELよりも低用量で種々の変化が90日毒性試験で認められていた。これらに基づいて、神経毒性について考察する予定である。

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