日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-120
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ポスターセッション
ベンズブロマロンによる胆管上皮細胞増殖への影響と肝障害増悪との関連に関する検討
*竹村 晃典関根 秀一伊藤 晃成
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抄録

【背景・目的】薬物誘発性の致死性肝障害は解決すべき重大な問題である。肝障害の予後の指標(Hy’s law)ではALTとビリルビン値が高値を示す場合、予後不良の可能性が高いことが報告されている。一方このような血漿マーカー変化がなぜ致死的毒性につながるかは不明である。我々はこれまでに胆汁排泄の起点となる毛細胆管構造に着目し、in vivoにおいて薬物がその構造の再形成抑制を示し肝障害からの回復遅延を引き起こすことを確認したが、上記の検討では肝障害による致死的な毒性は認められなかった。その原因として肝細胞の持続的な障害を受けた際に増殖する胆管上皮細胞(BEC)の胆汁排泄能の代償を想定した。これまでにBEC増殖に対する薬物の影響およびそれが肝障害に及ぼす影響を検討した例はない。そこで本研究では致死的な肝障害を臨床で引き起こしたベンズブロマロン(BBR)を代表薬としてin vivoでこの点を検証した。

【方法】C57BL/6JマウスにBEC増殖を誘発させる0.1% 3,5-ジエトキシカルボニル-1,4-ジヒドロコリジン(DDC)含有餌投与群、0.3% BBR含有餌投与群、0.1%DDC及び0.3%BBR併用群を用意し4週間投与した。最終日に肝臓を単離し組織免疫染色(CK19; BEC marker)を行って増殖したBECの評価やH&E染色による組織学的な変化を検証した。また同時に採血も行い血漿中のALTとビリルビン値を測定した。

【結果】BBR単独群ではCK19陽性細胞はcontrol群と同程度であり、DDC単独群ではCK19陽性細胞が著しく上昇した。一方併用群ではその上昇が抑制された。H&E染色による評価では併用群においてのみ肝細胞の壊死領域が認められた。ALT値はDDC単独群と併用群において差を認めなかったものの、ビリルビン値は併用群で他に比べて有意に高いことを確認した。

【結論】薬物がBEC増殖抑制を介した胆汁排泄能の低下を引き起こすこと、またこの現象が肝障害の増悪につながる可能性をマウスin vivoで示すことができた。

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