日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-126
会議情報

ポスターセッション
腎臓の再生尿細管及び線維化病変内の尿細管におけるSurvivin、SOX9及びCD44の発現
*松下 幸平豊田 武士山田 貴宣森川 朋美小川 久美子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】腎臓の尿細管は内在性に再生能力を有しており、尿細管壊死が生じた際には残存した細胞が脱分化して再生尿細管となり、遊走・増殖した後に再分化して組織は修復される。一方、この再生機構が破綻した場合には不可逆的な線維化に進展する。本研究は尿細管の再生機構に関わる因子の探索及び再生過程から逸脱した尿細管の特徴を明らかにすることを目的とした。

【方法】正常な再生過程を辿る再生尿細管を誘発するため、10週齢雌性F344ラットに片側腎虚血再灌流(I/R)処置を施して3及び7日後に解剖し、切開のみのsham群は処置7日後に解剖した。凍結切片を用い、正常尿細管及び再生尿細管をマイクロダイセクションにて採取し、cDNAマイクロアレイを実施した。腎線維化病変を誘発するため、6週齢雄性SDラットに片側腎I/R処置を施し10日後に解剖した。全動物の腎臓について病理組織学的及び免疫組織化学的に解析した。

【結果】処置3及び7日後にそれぞれ再生初期及び後期の尿細管が多数みられ、拡張した尿細管も観察された。線維化病変では拡張あるいは萎縮した尿細管が認められた。再生尿細管のマイクロアレイにおいてmRNA発現が上昇していた因子のうちSurvivin、SOX9及びCD44に着目し、各因子の免疫染色を実施した。結果、Survivin及びSOX9の発現は再生初期の尿細管に多く認められ、後期では減少した。線維化病変内の尿細管においてはSOX9の発現が多く認められたものの、Survivinの発現は正常尿細管と同程度であった。CD44は線維化病変内の尿細管並びに処置3及び7日後の拡張した尿細管に発現していた。

【考察】Survivin及びSOX9は尿細管の再生機構に寄与しているが、SOX9の持続的かつ過剰な発現は線維化への進展に関与していると考えられた。CD44は再生過程から逸脱した尿細管に特徴的に発現していることが推察され、その発現は線維化に先立って確認されたことから、腎線維化の早期指標となる可能性が示唆された。

著者関連情報
© 2019 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top