日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-12S
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ポスターセッション
血管内皮細胞のメタロチオネイン誘導における活性イオウ産生酵素の役割
*遠藤 広貴藤江 智也山本 千夏鍜冶 利幸
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抄録

【背景・目的】メタロチオネイン(MT)は,重金属の毒性軽減などに寄与する生体防御タンパク質であり,その誘導にはMT遺伝子のプロモーター領域に存在する金属応答配列に,亜鉛イオンによって活性化された転写因子MTF-1が結合することが不可欠である。血管内腔を一層に覆う内皮細胞はMT誘導能を有するが,無機亜鉛による誘導が起こらない。ところで,活性イオウ分子(RSS)は生体内に高いレベルで存在しており,特性が亜鉛プールの条件と一致することから,その機能の解明は内皮細胞における亜鉛代謝の理解に重要である。本研究の目的は,内皮細胞MTを誘導するジチオカルバメート銅錯体Cu10を活用し,内皮細胞MT誘導へのRSS産生酵素の関与を明らかにすることである。【方法】ウシ大動脈内皮細胞へのRSS産生酵素(CBS,CSE,3MSTおよびCARS2)siRNAの導入はリポフェクション法,MTタンパク質はウエスタンブロット法,MTサブアイソフォーム(MT-1A,MT-1EおよびMT-2A)遺伝子発現は定量的PCR法にて解析した。プロモーター活性はluciferase assayにて評価した。【結果・考察】内皮細胞において,Cu10によるMTタンパク質の発現上昇はRSS産生酵素を発現抑制することでいずれも減弱した。一方,Cu10によるMT mRNAの発現上昇はCARS2の発現抑制の影響を受けず,CBS,CSEおよび3MSTの発現抑制により増強し,なかでもCBSの発現抑制で顕著な増強が観察された。また,Cu10によるMT誘導に関与するARE経路の活性化はCBSを発現抑制することで増強したが,このとき,Nrf2の活性化は減弱した。以上より,CBSはRSSの産生誘導による亜鉛イオンの捕捉やNrf2以外の転写因子によるARE活性化の抑制によってMT mRNA発現を抑制することが示唆される。

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© 2019 日本毒性学会
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