日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-11E
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ポスターセッション
ナノ粒子の低用量胎仔期曝露による脳血管周囲病変とその誘導機序
*小野田 淳人武田 健梅澤 雅和
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抄録

【背景・目的】大気中に浮遊するPM2.5の超微小画分であるナノ粒子の胎仔期曝露は、自閉症などの神経発達障害の発症率を増加させることが、疫学研究によって明らかになっている。本研究はナノ粒子の低用量胎仔期曝露によって脳内に生じる病変の検出とその病変が誘導される機序の解明を目的として行った。

【方法】大気中ナノ粒子のモデルとして用いられるカーボンブラックナノ粒子 (CB-NP) を妊娠5, 9日目のICRマウスに経気道投与 (3 ~ 95 µg/kg) し、6, 12週齢仔から脳を摘出した。組織学的解析により脳全域を網羅的に観察し、検出された異常部をin situ 赤外スペクトル法やタンパク質発現解析を用いて評価した。

【結果】脳内の異常タンパク質除去を担う脳血管周囲マクロファージ (PVM) の消化顆粒の肥大化と正常細胞数のびまん的な減少が、CB-NP胎仔期曝露によって引き起こされた。その変性したPVMに接するアストロサイトにおいて、GFAPとAQP4の曝露量依存的な亢進が認められ、CB-NP胎仔期曝露は脳血管周辺に存在するアストロサイトの過剰活性 (アストログリオーシス) を誘導することが示された。in situ 赤外スペクトル分析により脳血管周辺を比較解析した結果、アストログリオーシスやPVMの変性が誘導された脳血管周辺においてのみ、タンパク質の変性を示すスペクトルシフトが認められた。更に、そのシフトの生じた脳血管周辺に存在するアストロサイトとPVMにおいて、変性タンパク質の蓄積に応答し、アストログリオーシスや細胞死の原因となる小胞体ストレスマーカーATF6とCHOPの亢進が確認された。

【考察・結論】低用量のCB-NP胎仔期曝露により、正常形態PVMの減少と脳血管周囲におけるアストログリオーシスが誘導された。この脳血管周囲病変部では、タンパク質の変性を示すスペクトルシフトと小胞体ストレスの亢進が認められた。以上の結果から、CB-NP胎仔期曝露により鋭敏かつ持続的に起こる脳血管周囲病変は、変性タンパク質の脳血管周辺への集積に起因する可能性が示された。

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