日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-131
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ポスターセッション
免疫抑制剤アザチオプリンのラットを用いた発生毒性に関する研究:器官形成期分割3日間投与による影響
*坂 芳樹堀本 政夫
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抄録

【目的】アザチオプリンは免疫抑制剤として自己免疫疾患等の治療に用いられているが、過去の動物実験で催奇形作用が認められているため、現在でも妊婦や妊娠している可能性のある婦人に対する投与は禁忌とされている。近年、このアザチオプリンの禁忌について臨床データを含む最新の知見を基に見直しが進められている。本研究では、過去の動物実験で認められた催奇形作用をより詳細に検討するため、妊娠ラットの器官形成期を3分割してアザチオプリンを3日間経口投与し、母動物及び胎児に及ぼす影響を検討した。

【方法】SD系雌ラットの妊娠7~9日、妊娠10~12日または妊娠13~15日にアザチオプリンの30 mg/kgを各々経口投与した。試験期間中は母動物の一般症状と体重測定を毎日実施した。妊娠21日に帝王切開を施し、着床数、死亡胚数及び生存胎児数を調べた。生存胎児は体重測定、雌雄判別、外表観察を行った後、骨・軟骨二重染色を施して骨格検査を実施した。

【結果及び考察】母動物の一般状態には投与による影響はなかったが、母動物体重が投与期間中から投与翌日に一過性に減少した。帝王切開所見では、妊娠7~9日及び妊娠10~12日群の着床後胚死亡率が各々100%及び91%と有意に増加した。胎児体重は妊娠10~12日及び妊娠13~15日群で有意に減少した。生存胎児に外表異常、骨格異常は観察されず、骨格変異も有意な増加は認められなかった。一方、既知のデータでは着床後胚死亡率の増加、胎児の低体重、骨格異常(胸椎体の変形)及び変異(頸肋)が報告されている。しかし、今回の試験では胚死亡や胎児の低体重は認められたが、骨格異常・変異は確認することができなかった。

【結論】アザチオプリン30 mg/kgを妊娠ラットの器官形成期に経口投与した結果、妊娠7~9日及び妊娠10~12日投与では胚致死作用、妊娠10~12日及び妊娠13~15日投与では胎児の発育遅延が認められたが、催奇形作用を示唆する所見は認められなかった。

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