日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-132
会議情報

ポスターセッション
新生児期低栄養曝露児の成獣期LPS曝露に対する遺伝子発現影響
*桑形 麻樹子柴藤 淳子瀬沼 美華等々力 舞Randeep RAKWAL北嶋 聡小川 哲郎
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

我々は、胎児期の低栄養は生活習慣病の発症リスクを増加させ、生後の制限はリスクを減少させる、即ち、出生前後で低栄養に対する影響が逆転することに着目し、生活習慣病や精神疾患の発症リスクに関与する遺伝子候補群の選抜を試みている。マウスの妊娠期あるいは新生児期に母動物を低栄養環境にし、妊娠末期(妊娠18日)胎児と生後7日新生児の肝臓の網羅的遺伝子解析を実施して、胎児および新生児で発現が逆方向に変化する21個の遺伝子を見出した。これらの中には免疫系に関与する遺伝子が多かった。今回、21個の遺伝子の中で、成熟期のリポポリサッカライド(LPS:Toll様受容体4を刺激し炎症を起こす)投与に対する応答が新生児期の低栄養負荷により変化する遺伝子を見出したので報告する。

C57BL/6母マウスに分娩後7日間、対照群の50%給餌制限した群(FR)と固形飼料CE-2を自由摂取させた対照群を設けた。生後11週に各群半数の出生児に250 µg/kgのLPSを3日間腹腔内投与した。最終投与翌日に全ての動物の肝臓をサンプリングし、21個の遺伝子についてLPS刺激に対する反応をRT-PCR解析により調べた。得られたデータは、栄養条件、LPS投与、性の三因子を加味して比較検討した。

21個の遺伝子について実施した下位分析の結果、Slco2b1はFRの影響がみられた(増加)が、LPS投与によりこの影響は消失した。また、Lrtm1およびMrapは対照群でのみ(増加)、Il1bはFR群でのみ(減少)、LPS投与による影響が認められることが明らかになった。これらの遺伝子は肝臓の薬物代謝トランスポーター、細胞骨格系、肥満、炎症サイトカインなどに関連する遺伝子であった。

以上の結果から、新生児期に低栄養曝露された児では成熟期において炎症刺激の一つであるLPSに対する反応が異なることが明らかになった。

著者関連情報
© 2019 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top