日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-138
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ポスターセッション
既知の発がん物質のrasH2マウスを用いた経皮投与による26週間短期発がん性試験
*萩原 顕昭原 智美勝呂 繭子河部 真弓宮田 裕人米良 幸典玉野 静光
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抄録

【目的】近年、経皮吸収型製剤の対象となる疾患領域が広がりつつあり、ライフサイクルマネジメントを目的とした経口剤から経皮剤への剤形変更が進んでいる。以前、肺発がん物質である1,2-ジクロロエタン(1,2-DE)をrasH2マウスの背部皮膚に26週間経皮投与した結果、肺における発がん性が検出できたことを報告した。今回は発がん性の再確認ならびに他の発がん物質を用いてrasH2マウスを用いた経皮剤の26週間での発がん性評価の可能性について検討した。

【方法】雌雄のrasH2マウス(7週齢、各群10匹)の背部皮膚を剪毛し、1,2-DEを42及び126 mg/200 µLの用量で週3回、また、皮膚、前胃、肝臓及び肺での発がん性が報告されている2,3-ジブロモ-1-プロパノール(2,3-DP)の発がん用量である44及び88 mg/kg b.w.を週5回、経皮投与した。また、媒体対照群としてアセトン100 µLを週5回投与した。26週経過後に屠殺剖検し、塗布部位を含む全身諸器官の病理組織学的検査を実施した。

【結果】肺重量では雄の1,2-DE高用量群及び雌の1,2-DE及び2,3-DP投与全群で用量に依存した絶対及び相対重量の有意な高値がみられた。肺の病理組織学的検査では、腺腫及び腺癌の発生率が雄の2,3-DP高用量群を除く全群で有意な高値を示し、腺腫の1匹当たりの発生個数は両被験物質において雄の投与全群及び雌の高用量群で有意な高値を示した。また、腺癌の1匹当たりの発生個数は雄の1,2-DE高用量群及び雌の両被験物質の高用量群で有意な高値を示した。

【まとめ】rasH2マウスに既知の発がん物質を経皮投与した結果、26週間で発がん性が示され、用量依存性も確認できたことから、「rasH2マウスを用いた経皮投与による26週間短期発がん性試験」は経皮剤の発がん性評価に有用なモデルになり得ると考えられた。

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