日本毒性学会学術年会
第46回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-140
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ポスターセッション
大腸がん手術検体由来PDX及びオルガノイドの特性と非臨床試験への利用
*成瀬 美衣落合 雅子谷口 浩和平岡 伸介今井 俊夫
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抄録

我々はマウスオルガノイドにin vitroで化学物質を暴露した後ヌードマウスへ皮下接種する系で、腫瘍性病変をエンドポイントとした化学発がんモデルを検討してきた。近年、ヒト腫瘍組織由来のPDXやオルガノイドを樹立し、抗がん剤の薬効評価系への応用を進めている。従来用いられてきたがん細胞株に比べ、これらは評価系として優れていると考えられるが、各評価系の特性の詳細な比較解析は行われていない。本研究では、大腸がん手術残余検体由来のPDX、オルガノイド、更に同じ組織から樹立した線維芽細胞とオルガノイドの共培養系について、元のがん組織との特性比較を行った。【方法】45症例の大腸がん手術残余検体を用い、分割した組織片から、NOGマウスへの皮下移植によりPDX、マトリゲルと各種増殖因子を用いた三次元培養法によりオルガノイド、FBS添加培地を用いて線維芽細胞を樹立した。元腫瘍、PDX、オルガノイドについて、NCCオンコパネルとSureprint G3 マイクロアレイを用い、DNA変異解析と遺伝子発現解析を行った。また、インサートを用いたオルガノイドと線維芽細胞の共培養系で同様の遺伝子発現解析を行った。【結果】変異遺伝子の比較では、PDXとオルガノイドの両者で元の腫瘍の変異を大部分維持していた。遺伝子発現解析からはPDX、オルガノイドともに各症例の特異的発現パターンを維持している一方、間質/免疫系遺伝子の発現を再現することができないことも確認された。共培養系では症例毎に特異的な遺伝子変動が生じ、中にはE-cadherinVimentin等のEMT関連遺伝子が含まれていた。【考察】PDXは、遺伝子発現解析結果から元腫瘍と類似性が高いことが示された。一方、上皮(がん)細胞が選択的に増殖したオルガノイドは、複数の試験条件を簡便に同時比較でき、がん細胞に対する薬効メカニズムを直接的に解析できる利点がある。また、オルガノイドと線維芽細胞との共培養系により、in vitroで元腫瘍により近い条件での解析ができる可能性がある。

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